診療のご案内
脂肪肝検査
人間は飢餓時に備えて、皮下脂肪や内臓脂肪に約10万 kcalほどエネルギーを備蓄しています。
風邪をひいたりお腹をこわしたりして数日食事ができなくなると、
これらの脂肪をとりこわしてエネルギーを作り出して生きていきます。
このように脂肪はとても大事な役割を果たしていますが、現代人が飢餓に陥ることはあまりなく、
毎日のエネルギーバランスはプラスになることが多いと思います。
脂肪肝では肝臓に
炎症が起きてくることがあります。
基礎代謝が高く運動量の多い学生などの若い人たちは摂取エネルギーが余剰になることはありませんが、
年をとって基礎代謝が落ちさらに運動量が減るとエネルギーバランスがプラスになり、
食事からの余剰なエネルギーはどんどん脂肪として体に蓄えられていきます。
脂肪組織への貯蓄に加えて、肝臓では一つ一つの肝細胞の中に脂肪滴として蓄えられます。
このことにより脂肪肝では肝臓に炎症が起きてくることがあります。
お酒を飲まなくても脂肪肝に!?
アルコールの中等量以上の摂取によっても脂肪肝が起こりますが、
アルコールをほとんど飲まないけれども肝臓に脂肪がたまる非アルコール性脂肪性肝炎の患者さまが、
現在日本で激増しています。
脂肪肝の進行
一部の脂肪肝は肝炎、肝硬変、
肝臓がんへと、病気が進行することがあります。
脂肪肝は高血圧や脂質異常症、糖尿病と並んでメタボリックシンドロームの一表現形です。脂肪肝のある患者さまはその後に糖尿病を発症するリスクが高く、糖尿病の前段階ともいえます。一部の脂肪肝では肝炎が起こっており、肝細胞が壊れては再生するということを繰り返します。この繰り返しの中で肝臓の繊維化がおこり肝臓が硬くなってきます。
脂肪肝の患者さまの中で一部の方は肝炎が進み慢性肝炎から肝硬変へ、さらには肝臓がんを発症し肝臓で命を落とすことになります。また、心臓病や他のがんにかかるリスクも高くなります。
肝臓がんは難治性がんです。
肝臓がんは、がん治療の進歩が著しい現代でも、がんが見つかってから平均で約6年程度の余命しかない(2cm以下の単発肝臓がんの場合)難治性がんになります。 肝臓がんは、手術などでがんを完全に切除もしくは焼灼しても、他の肝臓の部位から新たな肝臓がんが発生してくるため、胃がんや大腸がんと違って5年以上たってもぽつぽつと再発してくる特徴があり難治性がんとなります。
これは、癌ができた時点で肝臓全体がすでに癌を発生しやすい母地となっているためです。このような肝臓にならないためにも、早い段階から肝炎を止めなければいけません。
最新のハイエンド超音波機器で
肝臓の脂肪化、炎症および硬さを計測します。
従来は、腹部エコー検査で肝臓と腎臓のエコー輝度のコントラストの差をみたり、肝臓の中の血管の見えずらさなどで脂肪肝の有無およびその程度を評価してきました。
今回、当院に導入しました最新のハイエンド超音波機器では、
エコー波の伝搬速度や減衰量をコンピューターで計算し、肝臓への脂肪沈着の程度や炎症の程度さらには肝臓の硬さを数値化して評価できます。
この超音波検査(エコー検査)から得られる情報と血液検査のデータから得られる情報を統合して、予後不良なハイリスク脂肪肝であるかを判断します。
最新機器で「かくれ脂肪肝」も早期発見!
血液検査で異常を認めないいわゆる“かくれ脂肪肝”も見つけることができ、従来血液検査で推移を追うことができませんでしたが、エコーが示す脂肪沈着の程度(ATT)を追いかけることにより脂肪肝の治療経過を把握できます。未病の段階で自己にてダイエットに励み自力で脂肪肝を治そうとしている際に、肝臓の脂肪沈着の程度(ATT)を計測して推移を把握することができます。これにより、ダイエットのモチベーションが鼓舞されより成功に近づきやすくなります。
肝臓への脂肪沈着の程度や炎症の程度さらには肝臓の硬さが数秒で計測されます。検査中に痛みなど患者さまへの負担は一切ありません。
脂肪肝の投薬治療
脂肪肝の治療の王道は、ダイエットをして体重を落とすことです。
体重が2kg程度減るだけで、素直に肝臓の血液検査の値は改善してきます。
しかし、働き世代で運動を生活習慣の中に組み込むことが難しい人や、
仕事で酒席が多くアルコール摂取やエネルギー摂取が多い人は、そう簡単に体重を落とすことができません。ダイエットができるまで待っていては、肝臓の炎症が、さらには繊維化が進んでいくことがあります。
脂肪肝はダイエット以外に投薬治療でも改善します。
当院では減量できない場合は、生活指導に加えて投薬治療も行っています。脂肪肝によく合併する脂質異常症がある患者さまでは、脂質異常症の薬が同時に肝臓から脂肪を排出する量を増やしたり、肝臓でのコレステロール合成を抑えたりすることにより脂肪肝を改善させます。
また、糖尿病を合併する患者さまでは、体の中の糖分が尿からでていくように誘導する糖尿病の薬が、同時に脂肪肝を改善させる効果があります。さらにビタミンEは脂肪肝の炎症を抑える作用があり、約8割の患者さまで肝臓の数値が改善してきます。現在、脂肪肝に対する新しい薬が世界中で開発中であり、今後さらに画期的な薬が登場してくる可能性があります。